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「“フードエンターテインメント”という新しい業態の誕生(上)」『食品商業』(2019年12月号)

NEW!「フードエンターテインメント」という新しいカフェ業態が生まれつつある。ブームを牽引しているのは、「キャラクター・コラボカフェ」を企画運営している2社(レッグスとトランジットジェネラルオフィス)。本連載では、2回にわたってビジネスモデルを紹介する。

「“フードエンターテインメント”という新しい業態の誕生(上)」
 『食品商業』2019年12月号
 
 <「ハム太郎カフェ」を体験する>
 今年2月下旬、若い社員3人の案内で、「OMOTESADO BOX CAFF&SPACE」(螢譽奪哀垢運営)というコラボカフェを体験しました。場所は、半蔵門線の表参道駅から歩いて7分の路地裏。1月5日から2月24日まで、このカフェスぺ―スは「ハム太郎カフェ」になっていました。45日間はハム太郎が主役ですが、キャラクターが変わるとカフェの名前も変わります。名探偵コナンがテーマだと、「名探偵コナンカフェ」に店が衣替えをします。
 このシステムが「コラボカフェ」と呼ばれる理由は、「キャラクタービジネス(物販)」+「飲食店(サービス)」が相乗効果でファンを誘客しているからです。わたしたち4人はハム太郎のランチョンマットを敷いてある席に案内され、ハム太郎をモチーフにしたメニュー表を見ていました。満室のカフェの周囲を見渡すと、10代から20代前半の女子ばかり。来場者の95%が、高校生か女子大生(一部は若いOLさん)と思われます。
 彼女たちは隣に誰が座っているのか気にしている様子がありませんでした。カフェの内装もプロジェクターの画面も、ハム太郎をモチーフにしています。まるでテーマパークに来た時と同じように、来場者は大好きなキャラクターの世界に没頭できるのです。
ジャニーズファンや宝塚ファンに典型的にみられる消費行動、つまりは好きな対象に没入する消費行動を「沼消費」(学術的には「高関与消費」)と呼ぶのだそうです。渋谷から原宿、表参道一帯には、コラボカフェがたくさんあります。原宿の街全体が、キャラクターをモチーフにした異次元空間(=テーマパーク)に変わったと考えてよいのかもしれません。
  
 <コラボカフェの仕組み>
 コラボカフェの仕組みは次のようになっています。カフェの利用者は、スマホから予約チケット(500円〜:税抜き)を購入し、日時指定で座席を予約します。来店日に予約席を占有できる時間は80分間。食事と飲み物をその場で注文し、一緒に来た友人たちとカフェの雰囲気を楽しみながら、飲食が終わったら限定品のキャラクターグッズを買って店を出ます。
 事前予約制ですから、うまく集客できれば、座席の回転率は一日7回転。二部制ですから40分単位で座席が入れ替わります。参考まで、スマホの予約画面をコピーして紹介します。
 
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タイムスケジュール
カフェご利用は<80分>入れ替え制となっております。
カフェご利用時間
 10:00〜11:20、10:40〜12:00、 (〜まで中略) 19:00〜20:20、19:40〜21:00
■RESERVATION(事前予約)
WEBにて希望時間帯の事前予約を行っていただくことで、待ち時間なくご入場いただけます。
■当日席
お席が空いていれば、当日席をご用意できる場合がございます。当日、電話でのご予約などは受け付けておりませんので、事前にご予約のほどお願いいたします。
 
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 <コラボカフェの独自性と斬新さ>
 わたしは、ハム太郎のメニュー表からオムライスとカフェラテを頼みました。それぞれ1480円と980円。オムライスにはハム太郎が二匹、ふわふわ卵の隣に立っています。最中(もなか)の皮を細工したものだと思われます。ハムスターファミリーの顔を最中の皮にプリントしてありました。これがとても可愛いらしく仕上がっているのです。
 次に頼んだカフェラテの表面には、ハム太郎をプリントした「円形のシート」が浮かんでいました。日本の食品加工技術は世界に冠たるものらしく、匠の技が生みだした逸品です。実際には海苔の加工技術を応用したものだそうです。欧米の食品メーカーや飲食チェーンからは、こんな細やかで面倒くさい発想は生まれてこないでしょう。「これは食べ物なのだろうか?」と一瞬、わが目を疑ってしまいました。
 この形式のコラボカフェ業態を、谷丈太朗氏(螢譽奪哀江綉藜更毀魄)は、「フードエンターテインメント事業」と命名しています。飲食(フード)に娯楽(エンターテインメント)の要素を付加した新しい事業だからです。ビジネスの原型は、有名歌手が出演する「ディナーショー」です(例えば、松田聖子の高額なディナーショー)。「俺の株式会社」が、自社のフレンチ/イタリアンのレストランで、セミプロの演奏をサービスとして付加価値にしているのも、フードエンターテインメントのカテゴリーに入ります。
 ポケモンカフェやグッチカフェ、レクサスカフェなど、世の中には「常設のコラボカフェ」がたくさんあります。ただし、「螢譽奪哀后廖米眄扈澎賚瑳卍后以下では「レッグス」と略記)と「螢肇薀鵐献奪肇献Д優薀襯フィス」(中村貞裕社長、以下では「トランジット」と略記)が共同で運営しているコラボカフェは、期間限定の「ポップアップ型」です。しかも、一般のコラボカフェとコンセプトとビジネスの作り方が違っています。その違いを解説してみます。
  
 <コラボカフェの収益構造>
 2社が共同開発してきたコラボカフェの独自性は、以下の点にあると考えられます。まずは、店内の装飾でコンテンツの世界観を具現化しながら、キャラクターや作品に因んだストーリー性のあるメニューを提供すること。二番目に、キャラクター(映画やスター)をモチーフにしたグッズは、書き下ろしの限定品にすること。そのときにだけ、しかもその場所に来ないと入手できないこと。希少性を高めるために、カフェの開催を一か月から1か月半の限定開催にします。その結果、通常のカフェに比べて、高い集客率と稼働率、回転率を実現することができます。わたしたちが体験した表参道の「ハム太郎カフェ」は、3月から大阪に場所を移動しています。劇団四季やジャニーズの地方公演のような巡回公演の形式をとっています。
 ビジネス的には、食事やドリンクの単価が高いので、飲食の売上も粗利も大きくなります。キャラクターグッズの売上がそれに負けずと大きいのも特徴です。客単価は約4000円で物販からの収益が約35%を占めています。標準モデルは日商60〜120万円。これはコンビニの平均日販と同じか倍の販売金額です。圧倒的に収益力が高い業態だと想像できます。
 なお、二社の間では分業がうまくなされています。提携しているカフェ(BOX Café 9店舗)では、店舗の企画デザイン(基本設計と物販)をレッグスが担当。飲食レストラン部門をトランジットが運営するという役割分担ができあがっています。 
 このビジネスの本質は、飲食店にキャラクターが介在することで、消費者が異次元空間である種の高揚感を味わうことができることです。例えば、TDR(東京ディズニーリゾート)のブランド・エッセンスは、「非日常的な空間での時間消費」です。ミッキーのグッズが売れるのは、観光地のお土産物屋と同じロジックです。楽しく過ごした時間の思い出をモノとして持ち帰ることです。カフェ&レストランの舞台空間に、キャラクター(タレントやスター、映画のシーン)が投入されると、非日常的な高揚が生まれるのです。それと同じことが、コラボカフェでも起こっているのでした。
| Kosuke Ogawa | 09:42 | - | - | pookmark |

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