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「粋な生き方:石橋博良さんのこと」『北羽新報』(2019年7月28日号)
 今年に入ってから、実母(ワカ)をはじめとして、親しい友人や知人をたくさん失いました。法政大学経営学部の同僚だった遠田雄二先生、鬼塚豊吉先生。ずいぶん昔のことになりますが、仕事の関係で親しくさせていただいた石橋博良さん(「ウエザーニューズ」の創業者)のことをなぜか梅雨時になると思い出します。石橋さんの「粋な生き方」の話を地元紙に書きました。
  
「粋な生き方:石橋博良さんのこと」『北羽新報』2019年7月28日号
 文・小川孔輔(法政大学経営大学院・教授)
 梅雨の季節になると、いつも思い出す人がいます。2010年5月にすい臓がんで亡くなった石橋博良さんのことです。石橋さんは、世界最大の気象予報会社「ウエザーニューズ」(東証一部)の創業者でした。享年63歳。現役でまだまだ活躍できる年齢でした。
 梅雨時に石橋さんのことを想うのは、社葬が7月14日で、小雨の蒸し暑い日だったからです。いかにも石橋さんらしかったのは、しのぶ会を南極観測船「しらせ」の甲板で開いたことです。自らの死を悟って、最後をご自身で演出したのだろうと思います。粋な人生を駆け抜けた人でした。当時の個人ブログが残っていますので、しのぶ会の様子を紹介します。
 
 *  * *
 「HIRO'S WAY(ヒーローの流儀)@南極観測船「しらせ」の甲板から」(2010.07.14)。汽笛を5回鳴らして、石橋さんは船出した。午後7時少し前、フランク・シナトラの”MY WAY”が流れていた。夕暮れの船橋南埠頭。梅雨の真ん中、湿気で蒸し暑い。南極観測船しらせの甲板には、船出が終わっても、たくさんの社員の方が居残り、名残りを惜しんでいる。
 不治の病に冒されていたからなのか?競馬が大好きだった石橋さんは、人生の最後に大きな買い物(ギャンブル)をした。本当のところは、知らされていない。単に、船が好きだったからではないだろう。
 *  * *
 
 石橋さんが気象情報会社を起こしたのは、破綻した総合商社の「安宅産業」の社員だった頃に体験したある不幸な事件がきっかけでした。20代の商社マンだった石橋さんは、台風の進路を読み誤って、材木を積んだ船を小名浜港に寄せる指示を出してしまいます。荒海の中で船が沈没し、たくさんの船員の命が失われました。気象予報の事業を起こしたのは、亡くなった船乗りに対する自責の念からのスタートでした。
 ちなみに、南極探検をスコットたちと競った白瀬大尉は、わが秋田県出身の英雄です。白瀬大尉は、大きな借金を抱えて不遇のうちになくなっています。しのぶ会の様子を妹に話したら、「秋田の人は、生き方が下手くそだからね、、、」と電話で教えてくれたものでした。地元で英雄だった大尉は、不遇な人生を終えていたのでした。
 石橋さんは豪放磊落な方でした。記憶に残っているのは、わたしが『当世ブランド物語』(誠文堂新光社、1999年)のあとがきで、「一生かかって、自分の身長の高さ(166センチ)まで本を積み上げることを目標にします」と書いたとき、「先生、言うことが粋だねー」と喜んでくださったことでした。 
 同僚のひとりは、「小川さん、またそんなことを言うから、まわりから妬まれるんだよ」と警告してくれました。ところが石橋さんは、「そんなこと、気にしなくっていいんじゃないの。言わせとけば」と応援してくださったものです。今月発売された46冊目の本で、第一目標の100センチには到達しましたが、最終目標の達成まで先は長いです。
  
 ところで、46冊目の本(『「値づけ」の思考法』)に収録できなかったエピソードがあります。この逸話は、石橋さんが社長時代(2005年)にインタビューでうかがったものです。
 1960年代、天蓋がなかった後楽園球場では、雨が降ると野球の試合や野外コンサートが中止になりました。来場者は約5万人。ライト側スタンドに立って、雨雲と風向きを見る「伝説のお天気おじさん」の予報が外れると、弁当はすべて廃棄になります。
石橋さんの会社(当時の社名は、「オーシャンツール」)は、文京区の災害情報提供のために公共機関に気象情報を流していました。後楽園球場も、ゲリラ豪雨などの天気情報を購入するようになっていました。最終的に弁当の発注をどうするかについては、勘と経験に頼っていた予報をやめて、あるときから有料で気象情報を購入することになります。
 情報提供の価格は、月額30万円。一日に換算すると1万円。「リスクプレミアム(損失に対する倍率)が5〜10倍になると、ビジネスに持っていけます」(石橋さん)。ピンポイント天気情報がないとき、月平均で150〜300万円ほど弁当の廃棄損を記録していたのでした。
  
 後日談です。このサービスは、東京ドームが完成する1988年まで続いていました。その後は、福岡ドームで天蓋を空けるかどうかを決めるために、ウェザーニューズのサポートチームが活躍しています。
| Kosuke Ogawa | 09:53 | - | - | pookmark |

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