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池田屋のランドセル
 孫の紗楽(さら)が、来年から小学校に入学する。登校にはランドセルが必要になる。長男夫婦は、春先からランドセルを探しに神戸や大阪の百貨店やカバン専門店を探しまわっていた。わたしが神戸に仕事で出かけた昨日は、ランドセルの最終選択日になった。つまり、祖父が孫のために財布のひもを緩める日である。

 

 阪急百貨店には、自社ブランド(OEMメーカーは有名ブランドらしいが)を置いてあったりもした。このシーズンに、最上階にランドセルの特設売り場を設けていたのは、ちょっと驚きだった。6月なのだから、子供たちが小学校に入学までは半年以上はある。

 若夫婦たちの間では、どうやらランドセル専門店のほうが人気の様子だった。テレビでよく報道されているのが土屋鞄。秘書の内藤に聞くと、「(長男のときは、)神田屋と池田屋で迷って、神田屋になりました」。彼女からの情報だと、やはり土屋鞄や鞄工房山本などが人気だとか。

 うちの子供たちは、資金提供者が登場するまえに、ブランドをいくつかに絞っていたようだった。もっとも名前が知られている(私でも名前を知っている)土屋鞄は、事前調査ですでに候補から外れていた。理由は聞きそびれた。阪急の自社ブランドと、池田屋のランドセルが最終候補に残っていたようだ。

 ブランドの購買決定要因は、値段と機能性。ランドセルは6年間使用するので、耐久性が大切になる。あとは使いやすさか。こまかな機能性(背負いやすさ、重さ、つや、収納性、色の選択肢)など、たくさんの要因を比較考量してランドセルは選ばれる。こんな世界があることを、売り場を見るまではわからなかった。

 

 あーでもない、こーでもないと、ランドセル選びはそれなりに楽しそうだ。しかし、基本的には、「女子の世界(ワールド)」だ。決定までに2時間を要していた。わたしも、その風景を眺めていて勉強になった。

 長男夫婦の下の男の子(諒くん)はまだ二歳。ランドセル選びの間に、時間を持て余してぐずりそうだった。長男が、隣の鉄道模型店のほうへ、諒君を連れて消えていった。わたしが模型店を見に行くと、ジオラマに張り付いていた諒くんは、阪急の電気機関車の模型に目が吸い寄せられていた。

 結局、いちばん大きな電車の模型が、わたしからプレゼントになった。この際、予算は問題にならないだろう。ランドセルと同じで、お支払するのはわたしなのだから。

 

 さて、昼食の時間を挟んで、孫のさらと嫁の奈緒さんが選んだランドセルは、池田屋のイタリア製の牛革スペックだった。刺繍を入れて、6万3千円也。赤やピンクを選ぶと思いきや、とてもシックなチョコレート色をさらは手に取っていた。スティッチのほうは、さりげなくピンク色にしている。なかなかのセンスだ。

 孫たちがランドセルを選んでいる間に、わたしも一仕事を終えていた。ランドセルビジネスは、なかなか興味深い。奥が深そうだった。

 奈緒さんがさらのランドセルを選んでいる隣で、年配の売り子さんに大学院の名刺を渡した。このかたは実力者らしく(すぐにわかる)、店長さんを呼んでくださった。その時点で、5分ほどの短いインタビューが敢行できた。店長の若い女性から、ランドセルの季節需要と注文の取り方について簡単に説明を受けた。

 有名メーカー各社が、ブランド力をてこに、春先に大量に在庫を抱える「季節ビジネス」から、年間を通して生産を平準化する「受注体制」にビジネスの形を変えていった。そこが、ランドセルビジネスの転機になったらしい。いまは、年間を通して少量ずつ生産しているとのこと。

 先行していたイオンなど量販店から、ランドセルのお客様を引き離して、祖父を財布の提供者にしたことが成功要因なのだろう。「スーパーのランドセルが嫌なママたちが、かばん屋さんを必死になって探します」(秘書の内藤)。

 

 池田屋は、静岡ローカルのかばん屋さんだったらしい。それが、今年から大阪に出店。銀座にも支店を設けている。大躍進の秘密をもっと知りたいと思って、店長さんに名刺を置いて帰ってきた。

 「二代目の社長さんにコンタクトを取らせてください」が残した言葉。明日にでも、社長さんにメールを送るつもりでいる。まずは、静岡の本店に行って話を聞いてみたい。うまくいけば、来年度の「マーケティング論2019」のゲスト講師としてお呼びしたいのだが。

 6万3千円は安いものだ。なかなか興味深いランドセルビジネスだった。

| Kosuke Ogawa | 10:04 | - | - | pookmark |

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